はじめてづくし/オノテツ

何分、生まれてはじめてのことだからドキドキした。
屋形船に乗ったのである。
いや、それより何より我らがコジマくんが結婚した。
その披露の宴が屋形船で行われたのだが、屋形船もコジマくんの結婚も生まれてはじめてのことだから二重にドキドキさせられた。


おそらく、あの場にいた人全員が生まれてはじめてコジマくんの結婚する姿を見たはずだ。
皆きっと内心ドキドキしていたに違いない。
新婦のミナコさんにとっても、たぶん生まれてはじめてコジマくんの新郎姿を見ただろうから、それなりにドキドキしたことだろう。
ただ、自分が花嫁姿になるのも生まれてはじめてのことだから、コジマくんにドキドキしている自分に気づかなかいほどドキドキしていたかもしれない。


そんな初々しさを象徴するように、会場となる屋形船は今年の1月に就航したばかりのまだ真新しい船。
船内はきれいで、屋内は禁煙。
トイレはなぜかウォシュレット付きである。
その自慢のウォシュレットを使う機会には恵まれなかったが、料理をはじめ船の旅をじゅうぶんに満喫させていただいた。
コジマくんが袴姿で酒を飲み続ける様子は実に絵になっていたし、ミナコさんのウェディングドレス姿も目がくらむほど美しかった。
しかし、何よりも強く印象に残ったのは、ふたりのご両親の挨拶である。
ありきたりの言葉ではなく、場を盛り上げながらさらりと思いをにじませる話術はさすがだ。
あれを聞けただけでも、暇ななか忙しいふりをして駆け付けた甲斐があったと思う。
お幸せに。