歌の町/コジマ

と言っても小学校唱歌のアレでは無く、我が町の印象の事である。

ちなみに小学2年生時分の授業参観日、俺は音楽の授業でアレを歌わされたのだが
「よい子の住んでる良い町は 楽しい楽しいブタの町」
と歌詞を変えて歌ったところ、担任から大目玉を食らった上、罰として1週間、廊下の拭き掃除をやらされた。

俺はよい子ではあったが、担任のオオムラタミコ教諭が大嫌いだった。
なので参観日は奴に恥をかかせるチャンスだと思ってやったワケだが、奴の意趣返しはキツかった。
「勝負には勝ったが試合には負けた」
とはこういう事だろうか。
後に母に聞いた話だが、放課後の父兄懇談会の時、担任は「長年教師をやってきたが、こんな恥をかかされたのは生まれてはじめてですっ!」と言って大泣きしたらしい。
母はそれを聞いてついつい笑ってしまい、余計怒らせてしまったそうだ。
ちなみに担任が何故大泣きしたのかと言うと、それはつまり彼女がブタだったからさ。

閑話休題、とにかくこの町は、歩きながら歌っている人が多い。
我が家の前の通りを、昼は近所のテニス場帰りのセイガクさんたち、夜はほろ酔い加減のおっちゃんが、連日連夜、鼻歌を歌いながら通る。
人通りがあまり無い住宅地なので、皆気が大きくなっているのだと思うが、家の中には丸聞こえである。
ちょっと前には
「踊りに行こうよっ、イェイイェイェイェイェイェッ!フーッ!」
と熱唱している人が居た。
誰の曲か知らないが憶えてしまったので、そのうちバンドでパクってみようと思う。

歌う通行人には慣れっこになってしまったが、昨日のはちょっと凄かった。
夕方、ふと窓の外を見ると、曰く言い難い、怪しい動きをしている男が居た。
近所の知人がふざけているのか、と思って目を凝らしてみたが、見覚えがない。

「見ず知らずの男が、我が家の前の道路でブレイクダンスの練習をしている」

と言う事態を把握するまでに、少々時間がかかった。
歌う人は今まで沢山みてきたが、これは珍しい。
3分ほどニヤニヤしながら観察していたのだが、ふっと目が合ってしまい、件のブレイクダンス君は大変気まずそうな顔で小走りに何処かに走りさってしまった。
悪いことをした。
気づかれないようにビデオで撮影してYOUTUBEに上げれば良かった、と思う。