カーナビ/オノテツ

夏になると、R嬢のおじさんが所有している奥多摩の廃校を仲間うちで訪れるという慣習があって、今年は12日から14日にかけて、その一大イベントが行われた。
あいにく、12日と14日に仕事が入って13日の日曜日のみの参加となったが、いつものように真黒な雨雲を同伴することになったから、参加者の皆さんにとっては一日だけの参加でよかったのかもしれない。
案の定、到着とともに土砂降りとなったが、みんなもよくわきまえたもので、雷のゴロゴロいう音を聞いてそろそろオノテツさんが着くころと直感したらしく、河原での水遊びも早々に引き上げてきた。
おかげで誰も雨にぬれずにすんだのだが、もっとも川で泳いだM嬢にとっては、ぬれるもなにも関係なかったかもしれない。


2年か3年ぶりの訪問で道をよく覚えていなかったうえに、つい先日カーナビが故障して動かなくなっていたから、はたしてこの道でよかったのかと常に不安を覚えつつ、きょろきょろとあたりを見回しながら運転していて、なかなか疲れた。
もちろんカーナビがなくても、地図を見ながら運転することに慣れているから問題はないのだが、道に迷ったときにいま自分がどこにいるのか、カーナビならば一目でわかる。
だからついつい頼りがちで、いざないとなると不安になる。
なければないで困らないが、なくなると不安というのは、なんとも現代的な道具である。


そんなカーナビレスの山道ドライブと、初めて経験するバトミントン大会のおかげで、翌朝はズブズブに目覚めが悪かったのだが、仕事に行く前に美人歯科医のもとを訪ねる約束だったので、必死になって起き上がった。
4月から治療していた割れた歯の修復はほぼ完了したのだが、美人歯科医の見立てによると他にいくつか虫歯があるらしい。
さしあたり、右奥上の歯に大穴があいており、そこを何とかしなければならない。
が、8月の頭までは仕事がびっしり詰まっているから、その詰まっている仕事が片付いてから本格的に治療することにして、今日のところは借り詰めだけで勘弁してもらう。


本日の仕事の現場は麹町と聞いていたが、着く直前になって事務所からケータイに電話が入り、間違えて場所を伝えてしまった、麹町ではなく外苑前だという。
とりあえず、住所を聞いてタクシーで移動することにする。
いまどきのタクシーはたいていカーナビが備わっていて、住所を入力するだけでおおよその場所まで連れて行ってくれるから便利だ。
便利ではあるが、決してピンポイントで正解がわかるわけではないから、結局タクシーをおりてからウロウロと周辺をさがすことになる。
ナビがあれば安心という思いがある分、その後のさがす手間が必要以上に面倒に思えてならない。
いっそナビなんてないほうがいいように感じる。