教祖さま/オノテツ

仕事で某宗教団体の印刷物を読んだが、その教団は今年3月、運慶作といわれる大日如来坐像を12億円あまりで落札し話題になったところで、そのほかにも数年前には日産自動車村山工場の跡地を購入したりと、何かとハブリのよい話でメディアに登場する方々である。
そんなリッチな教団の教えに触れれば、ひとやまもふたやまも当ててたちまちセレブの仲間入りと内心思っていたのだが、そういう私服を肥やす考えを捨てなければいつまでたっても真理には到達できないというようなことが書かれており、腹黒い腹のなかの赤身の部分まで見透かされたようで、少なからず気分を害した。
おまけに、夫のギャンブル癖が抜けずに借金地獄に陥った家族の回想記などが載っており、それはそれで読めば読むほどに気が滅入る。
こんな本ばかり読んでいたら、いよいよ気分がふさぎこんで、それこそ神の力でも借りたくなってしまうのだろう。
これが信者を増やす秘訣である。


オレも人の気分を害するような説教をしたり、気が滅入る暗い話を積極的にすれば、少しは信者が増えるかもしれないと思う。
たとえば、U田裕也とかH野敬二とか、カリスマといわれる人たちはきっと、普段はそんなんなんじゃないかと思ってしまうのだが、これはまったくのイメージであり、根拠はない。
まったく根拠はないのである。
二度言うと真実味が薄れるが、本当に根拠はないのだ。
根拠がない話でも、何度も繰り返し言っているうちに、やがてそれを信じる人が現れる。
信じるものは救われるというが、それもまた根拠のない話だ。