歌舞伎町/オノテツ

歌舞伎町の中華料理屋で会食する。
風俗店やエロDVD屋が並ぶ一角の、細い細い路地に入り、プッシャーやら国際指名手配犯やら、ドクターモローの島からやってきたモンスターが潜んでいるにちがいない崩れかけの長屋の、その中心というか、一番奥深い場所に目指す店はあった。
よくもまあ、こんなコジャレタ店を選んだものだと感心したが、なかなかの人気店らしく、店内はすでに大勢の人たちで賑わっている様子だ。


ちょっと遅れて到着したから、すでに誰か来ているはずだが、知った顔が見当たらない。
無愛想な店の人に予約者の名を告げると、「ああ、2階ね」と吐き捨てるように言われ、甘味評論家の元横綱大乃国だったらぜったいに通れないような狭い階段をつたい2階へと上がる。
ところが、7〜8人のサラリーマングループがいるだけで、やはり知り合いはひとりもいない。
不思議に思い、ケータイで首謀者に連絡を入れると、1階の奥に席が用意されており、すでに会合は始まっているとのことである。
あわてて狭い階段を半身になりながら降り、入り口とは反対の方向に進んでいくと、なるほど奥にもう一部屋ある。
首謀者の女性と無謀者のオトコたちが、ニンマリとしながら酒を酌み交わしているのが見える。


この会合は、本来なら20名ほどの参加が見込まれる大きな会なのだが、連休前で忙しいのか、はたまた若手の会員たちに飽きられてしまったのか、この日の参加者は6名であった。
たったの6人で、ニンマリするほどの絶品中華を独占するのはなんとも申し訳ない気分だ。
メニューが豊富で、酔ったアタマでは数え切れないほどたくさんあり、何を頼んでいいかわからないほどである。
地元のプッシャーたちは、きっとメニューなど見ずにお気に入りの料理だけを頼んでいるのだろう。
中には隠語の品などもあり、頼むと料理じゃない別のものが出てくるのかもしれない。
そんなことを考えながら、不参加の人たちにみやげとして阿片のひとつやふたつ買っていってあげようとしたが、メニューを舐めるように見てもよくわからないからやめた。
気になる人は場所を教えるから、ひとりで行ってきてほしい。