田舎の色/オノテツ

ワケあって田舎に行ってきた。
田舎というと緑のイメージが強いと思われるが、実際に田舎に行ってみると、都会よりも木や草が多いのは事実だが、しかし色彩的には緑よりも茶色のほうがよく目につく。
それはもちろん、コンクリートに覆われていない泥土の色でもあるのだが、たいていの場合は錆びた色だ。
トタン屋根や窓枠や鉄柵が長年風雨にさらされ、錆びて茶色くなっている。
空き地に放置されたままの什器や、積み重ねられた廃車の山も錆で覆われている。


土の色は深みがあるが、錆の茶色は傷口のように生々しい。
田舎は落ち着くなどという人がいるが、今ではよっぽど山奥深く分け入らなければ錆の茶色から逃れることはできないだろう。
本当に田舎の風景を見たうえで落ち着いているのか疑わしい。
ただ、その錆の生々しさこそが落ち着くのだという病んだ都会人も中にはいるはずで、そういう人はせっせと田舎に出かけていくとよい。
オレもそのひとりだから、気持ちはよくわかるのである。