5ヶ月の呪い/オノテツ

目が覚めると、どういうわけか首が回らない。
横に向けないばかりか、上を向くこともできない。
起き上がると、バランスがうまく取れず、慎重に歩を進めながら、亀のようにノッソリとシャワーを浴びる。
朝メシを食い終わったころから、だんだんと頭痛がしてきた。
昨日までの意識が遠い感覚が、休みに入ったとたん、ひどい頭痛となって押し寄せてきたようだ。


首から肩、背中にかけてカチカチに固まっているから、とにかく体を動かさないといけないと思いジムに行く。
記録を見ると、前回来たのが去年の10月となっている。
まる5ヶ月来ていなかったわけだが、その間も毎月銀行口座から会費が引き落とされているので、月々の会費が1万円として、あわせて5万円ものタイキンをドブに捨てた勘定になる。
もちろん、ホントにドブに捨てたなら誰かが拾ってフーゾクにいくかもしれず、それなりに有効活用されたかもしれないが、このたび捨てた5万円はそのまま太平洋まで流されてサメに喰われたに等しい。
そんな弱肉強食の世界で無抵抗のままやられっぱなしの自分に対して、腹立たしいとか情けないとか何の感情もわいてこないから、ちょっと問題だ。
そもそも走らない自転車を懸命にこいだり、動く歩道の上で走ったりするということにはさほど興味がなかったのだ。
年々やせてこけていくカラダのことが気になり、太りたいがためにジムに通いはじめたのだが、根本的に間違っていた気がしなくもない。
でも実際、カラダを動かすと腹が減るからいっぱい食うんだよなぁ。


しかし、今日という今日は腹も減らず、首は上にはどうにか向けるようになったが、相変わらず左右に振ることができない。
頭痛も一向に去ってくれない。
しかたがないからジムからカイロプラクティックへと直行した。
首が回らないというのに、首ねっこをひねってゴキッと鳴らすカイロ流の治療はどうかと思われたが、なかばヤケクソである。
多少手荒なまねをしてもいいから、何とかしてこの頭の痛みをとっていただきたい。
その一心でカイロにすがったが、さすが施術後には首が左右にも振れるようになっていたからアッパレである。


残念ながら頭痛まではおさまらなかったが、5ヶ月の疲労の蓄積は一朝一夕には治らないということであろう。
たかが頭痛とはいえ、この不快感は捨てた5万円が戻ってこないことよりダメージが大きい気がする。