エイプリルフールぐらい正直に胸のうちをはき出したらどうか/オノテ

前回の日誌当番のときは気づいたらすでに日曜日で、一週間の記憶をたどってみるが仕事をしていたこと意外何も思い浮かばず、気が滅入るばかりなのでそのままバックレテしまった。
申し訳ない。
二週間が過ぎ、手がけていた仕事のメドがようやくついたところで、油断をしたのか風邪をひいた。
そのせいで先週末の飲み会を欠席したが、ホントはとても行きたかったのである。
なにより、参加の皆さんに風邪をうつせば治りが早くなる。
しかも、なかなかおおぜいの参加が見込まれる会だったから、おおぜいの人にうつせばうつすほど、各人の負担割合も軽減される。
さほど人に迷惑をかけずに、しかも自分が幸せになれて、おまけに酒が飲めるという格好の場だったのである。


ところが、思いのほか風邪がひどく、高円寺で途中下車をする気力がどうにもわいてこない。
しかたなく、不幸をひとり背負いこんで帰路につくことにした。
家に帰り、酒の代わりに白い粉と色とりどりの錠剤を呑み、昏々と眠った。
おかげで風邪はどうにか治ったが、眠りすぎたせいか意識が遠い。
脳みそがオブラートにつつまれたような感覚で、やることなすこと、どうも手ごたえがあいまいだ。
本日、ついに手がけていた仕事の最終日だったのだが、何をどうして終えることができたのかよく覚えていないありさまである。


こういうときは寝るにかぎると思うが、これ以上眠るといよいよ脳みそが収縮して、医者からアルツハイマーと診断されることになりそうだ。
などと考えるのは先日、テレビで若年性アルツハイマーを扱った映画を見たせいかもしれない。
渡辺謙の演技がなかなかリアルで、見ているほうもエンドロールが流れるころには視点が定まらなくなり、口を半開きにしたまま動けなくなっていた。
高倉健のヤクザ映画を見た客が肩で風を切りながら帰っていくごとく、健さんではなく謙さんになり切ってしまったのである。
この映画の劇場公開の際に映画館の出口で張っていれば、きっと面白い光景に出会えたはずだ。


この擬似ハイマーの危機を乗り越えるには、やはり寝るしかない。
幸い、明日から春休みである。
本来なら、すぐさま4月9日のソロライブの準備にとりかかるべきだが、十分に休んでオブラートにくるんだ脳をむき出しにしてからのほうがいいような気がする。
でないと、「自分にとってはじめての試みをする」という企画の趣旨にかなうだけのネタが用意できないだろう。
この年になって人前ではじめての試みを披露するのだから、童貞のような初々しさで臨まなければ、定年退職後にはじめる習い事と同じになってしまう。