練習/オノテツ

今週は事務所に行っては仕事をするだけの単調な日々で、浮いた話がひとつもないのだが、そんな沈みっぱなしの灰色の生活から救ってくれたのがT君である。
自主制作映画のサントラを依頼されたとのことで、そのレコーディングにちょこっと参加させてもらうことになった。
昼間、吉祥寺でT君と会って譜面とデモ音源をもらう。
簡単そうに見えて、やはりどこか変なコード進行。
しっかり練習しないと、感じがつかめないままレコーディングに突入して後悔しそうだ。
だから、すぐにでも練習を始めたいのだが、その前に今日もまた仕事がある。
まずはそちらを片付けないと、落ち着いて曲に取り組むことができない。


仕事が終わり、すぐさま家に帰ってT君の曲を練習するつもりだったが、一仕事終えて気が大きくなっているせいか、練習は明日でもできる気がしてきた。
そこで、予定を変更して渋谷に行き、ネストで行われている円盤ジャンボリーに顔を出すことにした。
本当のことを言うと、ふちがみとふなととそとやまさんのとりおをみたかったのである。
どうしてもみたかったのだ。
遅れて行ったせいで後半の数曲しか聴くことができなかったが、それでも十分に堪能した。
緊張感がぴりぴりと張りつめているのに、楽しい。
大げさでなく、ホントに奇跡のような演奏をする。


ふちがみさんたちの演奏が終わり客電が点ると、前方によく知った顔を発見した。
昼間あったばかりのT君である。
再会を祝して一杯やろうかと思ったが、昼間もランチをともにしたことだし、そこまで手厚くもてなすこともなかろうと、二言三言交わしただけでいそいそと独りで帰路についた。
家に帰ってビールを飲みながら晩飯を食い、そのうちにいい気分になって気持ちよく寝てしまった。
練習は明日でもできるのだから、何もせずに寝たところで問題はない。
しかし、肝心のレコーディングもまた明日であることを忘れていた。
練習というのはレコーディングのための練習だから、レコーディングの前に練習を済ませておかなければ意味がないのである。
明日もまた時間に追われる一日となりそうだ。