郷里/コジマ

土曜日に、郷里の叔父が亡くなった。


日曜の遅くに飯塚着、その足で通夜に。
その後、俺は実家に帰って寝たが、従兄弟たちは慣習で寝ずの番だ。
葬式ってフツーに出すだけでも凄く消耗するのに、なんでこんな風習があるんだろう。


明けて今日葬儀。
斎場に行く途中、うちの家族や亡叔父の古い知り合いのおばさん(というか、もうおばあさんなんだけど)を車で拾う手はずになっており、彼女の自宅まで迎えに行ったところ、彼女の連れ合いが末期ガンで自宅療養しているので、葬儀に行く前に一言挨拶して行けと言われる。
そのおじさん(というか、もうおじいさん)ももちろん古い知り合いだし、会っておくべきだとは思ったのだが。しかし、ちょっと躊躇する。
これから死んでいく人間に、なんと言ったら良いかわからない。
それに、今俺が着ているのは喪服だ。
見舞いにこれほど相応しくない格好もねえよなあ。
しかし、多分今会っておかないともう二度と会えないかもしれないので、意を決して病室の扉をくぐったところ
「まだ早いよ」
と苦笑いしながら言われる。
洒落がわかる人でよかった。


葬儀では、20数年ぶりに会う親類やら知り合いやらと挨拶したりとかなんだかで非常に疲れた。
誰が誰なのやら。
どういう訳だか、俺が中坊の時の担任まで来ていた。
懐かしそうに
「今何やってるんだ?」
とか
「授業中に落描きばっかりしてたが、やっぱりそっち方面に進んだかあ」
とか
「有名になる前に、俺も一枚なんか描いてもらわんとなあ」
とか言われても鼻白むばかり也。
俺は昔からアンタの事が大嫌いだったよ、知ってるよなあ?アンタ覚えてねえのか?
教師とは大概折り合いが悪かったが、その中でもアンタが一番嫌いだった。
昔はゴキブリみてえな男だったが、今は枯れてゴキブリの干物みてえだ。
そんな嫌な奴と歓談しなければいけない事にもウンザリしたが、25〜6年前の恨みを忘れてない自分の性根にもウンザリした。
すっかり老け込んだ親戚や、はしゃぎまわる従兄弟の子供達や、棺桶の中に黙って横たわる叔父貴の顔を見ていると、自分がもう若くないのが嫌と言うほど分かる。
でも、中身は世界で一番馬鹿な生き物だった男子中学生時代とあんまり変わってねえ訳だ。
くそっ。