奇遇/オノテツ

昨日の日曜日は久しぶりに下北沢に行き、「ぐ」でライブを見た。
イトケン率いるズッパディペッシェと日比谷カタンという、字面だけ見るとケーキ屋の対決のような甘い取り合わせだが、実際のところ現時点でもっとも極端で先鋭的なことをやっている二組の競演だから、むしろとっても辛口なイベントといえる。
しかも、企画したのがこれまた極端なほど回りくどいMCが好評の長谷川まひまひだから、甘辛にしてコテコテなソースがかかっているわけだ。
見る前からして満腹感がただよう。


そんな中、カタンはいつになく饒舌で、切れ目のないトークとメリハリある演奏で客のハートをがっしり掴んでいた。
そして、最後の最後には『ミツバチのささやき』の日比谷バージョンを演奏して締めくくり、掴んだハートを鷲づかみにした。
わしは何がなんだかわからなくなった。
それほどすごい60分だった。


続いて登場したズッパは、カタンとはまるで正反対のベクトルを示しながら、聴く者をひきつけるという意味では変わりがない。
この日もいつにもまして緩く穏やかで、楽屋トーク的な日常会話が随所に炸裂する。
日常の中に異次元世界を出現させるのがカタンなら、ズッパは「日常の再体験」とでもいうべきものを、きわめて特殊な形で提供する。
手法はそれぞれ異なるが、どちらもいい意味で倒錯的で、だから決してメジャーにはなり得ないものの、一目を置くべき存在であることは間違いないだろう。


カタンが演奏で示してくれたとおり、今週19日の金曜日はカンガワさんの命日にあたる。
早いもので、もう二年が過ぎたことになる。
音楽の世界は狭いから、偶然というほど奇跡的なことではないかもしれないが、去年、一周忌のイベントをやったときに受付をしてくれたペンギンハウスの人が昨日の「ぐ」に来ていて、ほぼ一年ぶりに再会した。
あの日は長時間、超満員でお客さんや店の人には迷惑をかけたが、今でも覚えていてもらえるのはうれしい。


それとは関係ないが、来月11月4日(日)にはペンギンでソロライブを行う。
偶然に便乗した奇跡的な告知だが、こちらも覚えていてもらえるとうれしい。