カビ/オノテツ

昨日は本年最後の仕事だったのだが、31日の朝までかかるだろうと覚悟しながら現場に行くと、思いのほか分量が少なくて拍子抜けする。
夕方から取り掛かり、夜中の12時前には終わってしまったから、31日がまるまる空いた。
空かないはずの日がふいに空くと、何をしようかとあれこれ考えたあげく結局何もしないのが関の山だ。
どうせ何もできないなら、最初から何もしないで寝転んでいようと思ったが、やっぱりおちおち寝てられずに、日が傾きだしてからのそのそと玄関先の掃除を始めた。
人間、何もするまいと決め込むと何かしらやりたくなるものである。


玄関先の掃除を終えてから、食料品を買いに近所のスーパーに行くと、カビ取り用の洗浄剤が安売りされている。
以前風呂場のカビが気になったことを思い出し、いい機会だから一本買い求めた。
家に戻ってすぐに風呂場の掃除をしようと思ったが、その前にガス台の汚れが気になってしまい、レンジまわりの掃除を済ませてから風呂場に取り掛かることに決めた。
レンジ用の洗剤はガス台の下の収納にある。
扉を開けて覗いてみると、レンジ用クリーナーと並んで、今日買ったのとまったく同じカビ取り洗浄剤が置いてある。
そういえば去年の暮れにも風呂場のカビが気になって、年末にわざわざスーパーで買ったような気がする。
どういう理由か忘れたが、そのときはすぐに掃除に取り掛からず、いったん仕舞っておいたのだろう。
そしてそのまま一年が過ぎたようだ。


今年はそういうフシダラなことにならないよう、先に風呂場の掃除から始めてみようかと考え直したものの、やはりどうしても先にレンジまわりの掃除を済ませたい。
だから今年もまた、カビ取り洗浄剤はいったんガス台の下の収納に仕舞われることとなった。
同じ柄のボトルがきれいに二本並んでいて、まるでお店の棚みたいだ。
ガス台の汚れはなかなか手ごわく、たいそうな時間が費やされて、終わったらころにはすっかり疲れ果ててしまった。
腹も減ったから休憩がてらメシを食い、掃除の済んでいない風呂に入った。
ゆっくりと湯につかりながら、除夜の鐘の音を聞く。
百八つの鐘が鳴っているうちに年の数だけ願い事を念じると、来年一年間が健康で過ごせるという迷信があるそうだが、四十いくつもの願い事を思い浮かべるのが面倒だから「極楽極楽」とだけ念じておいた。
来年の暮れにはカビ取り洗浄剤がさらにもう一本増えて、三本になっていることだろう。
その間に、カビの細胞もまた増え続けるのである。


それでは皆さんよいお年を。
新年明けて第一回目の日記はコジマくんです。
お楽しみに〜