性/オノテツ

8時帰宅。
昨日のヤマ場はどうにかやり過ごしたが、予定通りにはいかず今日もまたひとヤマ越えなければならなくなった。
予期せぬツインピークスで、ペース配分の失敗がズシリと重く堪えている。
昨日と同様、朝一番でカイロに行き、もうあと24時間だけでいいからカラダが持つようにしてくださいと懇願する。
このままだと間違いなく倒れますとの有り難くない忠告を受けながら、再びガシガシと揉んでもらった。


ガシガシ揉んでもらったものの、昨日と比べると効き目は確実に薄れていて、夜中になってもなかなか調子が上がらない。
やはり薬物じゃないから、カラダのほうも慣れるのが早いようだ。
座り続けで腰が痛くなってきても一向に外に出る気がしない。
外に出ない分仕事がはかどるかというと、集中力が落ちているから思ったほどには進んでいない。
仕事が進まないのはオレだけじゃないらしく、あちこちでもため息が漏れている。
それでもどうにか、翌朝明るくなり始めるころにはしかるべき作業を終えることができ、ようやく一区切りがつけられた。
皆やつれた顔で力なく笑っている。


帰りはいつもなら同じ方向の人と一緒にタクシーに乗るのだが、さすがにクルマも飽きたからプラプラと電車で帰宅することにした。
地下鉄に乗り、中野で総武線に乗り換えたまではいいが、いつの間にか寝入ってしまったようで、気がつくと一駅乗り過ごしている。
早く家に帰ってしっかり横になって眠りたいのに、こんなところでフライングして、しかも時間を無駄にしてしまうとは実にモッタイナイ。
などと貧乏性の一面が顔を出すあたり、疲れているはずなのにすっかりいつもの自分自身に戻っている。
それにしても、非日常的な暮らしの中でも決して変わることのない己の核心が「貧乏性」とは、何とも悲しい人生だ。
明日は久しぶりの休みだが、1週間締め切りを延ばしてもらった書評仕事を片付けるつもりである。