夏/コジマ

朝、汗だくになって起床。
死にそうな気分で這うようにして流しまで行き、水を飲んだのだが、ふと冷蔵庫の上に乗っている濃縮出汁の素の瓶をみると、中にカビが生えていて駄目になっていた。
先日から「いや、まだだ」「まだ早い」「まだ違うんだ」と自分を偽ってきたのだが、もう嘘も限界のようだ。
認めたくないがしょうがない。
とうとう、夏になってしまった。
  
  
夏は大嫌いだ。
うんざりだ。
夏なんか死ねばいい。
  
  
夜は暑くて熟睡出来ず、昼間は頭の中にかすみがかかっていてまともに考えられない。
短時間で簡単にかもされてしまう(cもやしもん)食べ物。
熱暴走するマック、遅れる仕事。
浮かれる若者。
蒸れるキンタマ
何もかもうんざりだ。
俺は本当に、心の底から夏を憎んでいる。
  
  
夏の俺は、ビールを飲んでは小便ばかりしている、一本の管にすぎない(c開高健)。
「ビールが美味いのが夏の唯一の救い」だと言ってみることもあったが、それもよくよく考えると自分をごまかしていただけなんだ。
夏はやたらと汗をかき、喉が渇くのでついつい冷たいもの(シャブの事じゃねえぞ)が美味いと錯覚してしまうのだが、気温が高いとその分ビールがぬるくなるのも早いと気がついた今となっては・・・。
そして、言っておくがビールは俺たちが思っているよりも偉大だ。
本当は春夏秋冬いつだって美味いのである。
  
  
女の子が薄着になるのが嬉しいような気もした時期もあったが、最近の若い女性諸君(もちろん、皆が皆と言う訳ではない)の露出の多さはマイアミのパン助(実物見た事ねえけどさ)もかくやと言う程であり、正直目のやり場に困る。
かと言って、じろじろ見ると変態扱いされそうだ。
今年の夏、日本の女性たちの間で流行るのはブルカであって欲しいと思う。

仕事机と兼用になっているやたらと背の高いロフトベッドに寝ているので(天井まで60cm位しかない)、気温が高い時期は天井近くの暑い空気の層のまん中で寝ている事になる。
冬は良い塩梅なのだが、夏は困る。
もう、いっそのこと水風呂に入ったまま寝てやろうかとも思う。
カバか、俺は。
  
  
こんな鬱陶しくていやらしい季節なのに、過ぎ去っていくとき妙にもの悲しい気持ちにさせるところも嫌いだ。
「今年は何も良いこと無かった」ような気持ちにさせられてしまう。
それも錯覚だ。
今年だけじゃなくて、去年も一昨年もその前の年も良いことなんか無かったし、たぶん来年もそうなのだ。
つまり毎年毎年何かにだまされているだけなのだ。
  
  
さんざん夏の悪口を言ったが、じゃあいつの季節なら好きなのかと言うと、好きな季節なんか一つもない。
冬には冬のいやらしさがあり、春には春の駄目さがある。
秋は山海の珍味がぐっと増え、その分ほかの季節よりかましな気もするのだが、だからと言って好きと言う訳じゃない、勘違いすんじゃねえぞ秋。
  
  
このように日本には移りゆく四季と言うものがあり、それぞれ違った理由で呪い憎む事が出来る俺は、ある意味幸せだと思う。
ポジティブなんだかネガティブなんだか、ようわからん。