無重力の夜/オノテツ

4時就寝、9時起床。
オレは二階に住んでいるから、毎日階段を上がり降りしている。
家族以上に慣れ親しんだ階段さまだが、このたび修理をする必要が生じたので、朝から職人さんたちがぞろぞろやって来てはトンカチトンカチと壊し始めた。
他人が我が家を破壊している最中に家を空けて留守にするのはやはり気がひける。
仕方なく部屋で仕事をしていたのだが、思った以上に工事の音がやかましくてなかなか集中できない。
職人さんたちは、あんなに騒がしい音をたてながらよく仕事に集中できるなぁと感心していたら、予定より早く作業が終わった。
電車と同じで、音がでかい分、進みも早かったのかもしれない。


キレイに生まれ変わった階段を下から見上げていたら、親方が言った。
「一番上の段だけはまだ接着剤が乾いていないので、今夜一晩は踏まないようにしてください」。


オレは二階に住んでいるから、まさにその「一番上の段」の地平に生活している。
ということは、今夜一晩、宙に浮いたままで過ごさなければならない。