風呂/オノテツ

4時就寝、10時起床。
ここ最近、風呂場での独り言が多くなった。
しかも、どういうわけか「もうダメだ」「死ぬ」といった聞き捨てならない言葉ばかりが出てくる。
風呂は決して嫌いじゃないから、ホントは「極楽極楽」と呟いて湯の中にブクブクと沈み込みたいところだが、意に反して不穏な発言ばかりが飛び出すのは、もしかして半身浴のせいだろうか。
理由はどうあれ、もしオレの風呂場が盗撮ないし盗聴されていたら、極楽どころか地獄絵図が現われ、人を恐怖のズンドコにつき落とすだろう。
それほどまでに陰惨な現場と化しているのである。


でも、オレ自身は今すぐに死のうと思いつめているわけではないから、インターネットで入浴シーンを目撃しても、どうか心配しないでいただきたい。
たぶん、オレの中の小人が覚えたての言葉を口からでまかせに発しているだけで、大きな害は無いはずだ。
太古の昔から言われているとおり、死ぬ死ぬと言う人ほどなかなか死なないものである。
死ぬ人は、何も言わずに突然死んで周囲を驚かすのだ。


が、ここで問題になるのは風呂である。
突然死んだ彼らや彼女たちは、周りの人々には何も言わなかったものの、風呂場では死ぬ死ぬと独りで呟いていたのかもしれない。
そう考えると、オレの中の小人も少しはキケンな存在に見えてくる。
それに、人さまの入浴中の独り言が一体どんなものなのか、ちょこっと覗き見したい気分になる。
特に最近は若い女性の自殺が増えているらしいから、そのあたりオレが何とかしたいという気持ちもあり、どうにかならんもんかと、ひとり妄想に耽っている。