負け犬のブルーズ/コジマ

回転寿司で昼食。

ガラガラだったがついつい隅っこに座ってしまう。
癖というか、まあそう言う性分なのだが、これがこの直後に悲劇を招こうとは思ってもみなかった。

紙おしぼりでゆっくり手を拭き、お茶を作っていたら、10人前後の鯔背な現場のお兄さん方がどやどやと店内に入ってきてカウンターがほぼ埋まってしまった。
彼らは皆、同じ現場から昼飯を食いに来たらしい。
殆どが二十歳前後の若い衆なのだが、一人だけ三十路絡みの男が混ざっている。
この男が彼等の上役らしい。
そしてどうもこの場は彼のおごりらしく「何でも食ってイイから。でも遅れ気味だからぱぱーっとすませちゃってな」「うーっす!」「ゴチっす!」等のやりとりが耳に入ってきた。
全品105円の店の「何でも食ってよし」は、何か悲しい。大人数だから結構太っ腹と言えば太っ腹なのだが。

まあ、そんな事はどうでも良い。
問題は、彼等の陣取った位置が俺の右隣、この店のコンベアの流れでは俺の上流だった事だ。
考えてもみてほしい、二十歳前後の胃腸が全開バリバリ、その上肉体労働で腹を空かせた男達が、10人も回転寿司の川上に座っていたらどうなるか。
たちまち上流部分における水産資源の乱獲で、俺の座っている川下では魚が捕れなくなってしまった。
いや、食い物が流れてくることは流れてくるのだが、「チーズケーキ」とか「プリンアラモード」とか「ストロベリーカスタードケーキ」とかそんなんばっかし。
これは何?ケーキバイキング?
別途注文しようにも、カウンター内の職人二人も彼等にかかりっきりになってしまっている。
駄目だ、とてもじゃないが敵わない。
寿司が無いならお菓子を食べればいいじゃない。
マリーならそう言うに違いないが、俺は昼食にケーキを食べるような変質者ではないので、潔くあきらめて勘定をすませ、外に出た。

結局、寿司屋で俺に取れた皿は、彼等が入店する前に捕獲したイカ以外には、ウニ(どうもウニは皆嫌いらしく、乱獲の対象外であった)、そしてパンナコッタ(食ってんじゃん甘い物)、以上3皿。
それだけじゃ足らなかったので、コンビニでおにぎりを買い、近所の公園で食す。
普段よりもしょっぱく感じたのは何故?