哀しき願望/オノテツ

2時就寝、9時半起床。
風邪が良くならないので医者に行き処方箋を書いてもらう。
その足で近くの薬局にクスリをもらいに行くが、ここにはカラダのことを過剰に心配してくれる薬剤師さんが居て、いつもくすぐったい気持ちにさせられる。
今日はその薬剤師さんが留守だったようで、別の若い女性が白衣姿で応対してくれたのだが、やはり同じように過剰に心配してくれた。
ただの鼻風邪なのに、不治の病にでもかかった気分である。
これに気を良くして通い詰める男性諸氏もいることだろう。


午後は久しぶりにチンタラ過ごした。
仕事をリタイヤしたオヤジが趣味で書いている官能小説にコメントを付けるという、まことにどうでもいい仕事があったので、仕方ナシに読み始めたのだが、これが分量だけは原稿用紙400枚近くある立派なシロモノで、いっぱしに時間だけは取りやがる。
とはいえ、性描写の部分が全体のおよそ8割を占めているから、段々とそのあたりは読み飛ばすようになり、後半はほとんど読まずに流した。
しばしばこの手の素人エロ小説を読む機会に恵まれるが、共通する特徴として上げられるのは、登場人物が皆善人ばかりということである。
主役の男性は必ず仕事ができる上に気配り上手で、女性は明朗快活で何かにつけて察しがよい。
身の程をわきまえていることも重要な要素だ。
ともに同僚や友人たちから絶大な信頼を得ているが、その同僚や友人たちもまた性格の良い人ばかりで、会話は常に朗らかな冗句に彩られ笑いが絶えない。
読んでいて背筋が寒くなるが、著者の願望を体現しているのだろう。
そのような願望を抱く人にとって、過剰に心配してくれる薬剤師のお姉さんなどは、一つの理想像なのかもしれない。
などと考え、今朝クスリを手渡してくれた彼女が白衣を脱ぎ捨て、奔放な性戯に溺れる姿態を頭の中で描いてみたが、やっぱり背筋が寒くなった。
風邪による発熱のせいばかりではないと思う。


明日は不燃ゴミの日。