優先順位/オノテツ

3時就寝、7時半起床。
首都高速千駄ヶ谷から代々木、新宿あたりのカーブの連続を抜けると、比較的なだらかな直線になる。
そのあたりで眠気が襲ってきて、うつらうつらし始めた。
すると、隣を並走していたタクシーの運転手が話しかけてきた。
「おい、若造。オレの前に出ようなんて10年早いぜ。自分の立場をわきまえて走りな」
オレは若造と言われるほど若くはないが、その運転手は確かに、年がはるかに上に見える。
それでも理不尽なことを言うと思い、言い返した。
「何を言うか、おっさん。オレはあんたと競ってるわけじゃないから、先に行きたいならとっとと行ってくれ」
すると運転手がさらに言う。
「そうはいかん。オレが前に出るためには、若造よ、アンタが後ろへ下がらなければならんのだ」
「オレは普通に走っているんだから、オッサン、アンタが勝手に先に行けばいいじゃないか」
「いやいや、そうはいかんのだ。アンタがちょっと下がればいいだけで、そうすれば二台で並んで走れるじゃろうが」


そのとき、自分の頭がガクンと後ろに倒れ、ハッと気がついた。
少しばかり眠りに落ちていたらしい。
目覚めたとき、ちょうど高井戸の出口あたりを走っていたので、周囲のクルマに悟られぬよう、素知らぬ顔をして高速を降りた。
あやうく寝過ごして中央高速に入るところだったから、いいタイミングで目が覚めて得をした。


家に帰って間もなくすると、注文していた書棚が届けられた。
こちらもまたタイミングよく、本来なら喜ぶべきことだが、残念ながら書棚を置くスペースがまだ片付いておらず、組み立てて設置することができない。
仕方がないから、しばらく梱包を解かずにそのまま置いておくことにした。
しかし、ヘタをするとこのままの状態で1年くらい過ぎそうだから、これから寝る暇を惜しんで部屋を片付けなければならない。
そうするとまた寝不足になり、今度はいよいよ山梨あたりまで寝過ごしそうで怖い。
まずは寝ながら物が片付く装置でも発明しようと思う。