無題/おのてつ

深川のいっぷくというお店でテルミン奏者のY嬢とライブを行った。
知り合いの芸術家のS氏夫妻がやっている店で、経営なり運営に関するの諸々のことは奥さんのMさんが取り仕切っているようだが、雑貨とポップなアート作品がごちゃごちゃと渾然一体に並んでいて、いるだけで楽しい。
Mさんに、近所の小学生とかが居ついちゃって困りませんかと尋ねたら、思ったとおり子どもの溜まり場になることがしばしばあるのだそうだ。
そりゃそうだよなぁ。
オレが子どもだったら間違いなく学校帰りに立ち寄って、うだうだと気だるい放課後を過ごすに違いない。
そんなふうに思わせるなごみ系の店である。


土曜日だったからか、残念ながらというか幸いにというか、ライブに子どもたちの姿は見られなかった。
そのかわり近所のおじさんやおばさんたちが数人来ていて、いつにも増して平均年齢の高い客層でかえって緊張した。
Y嬢がテルミンを演奏する姿を見て、何か良からぬことを企んでいる二人組と思われたりしてないだろうか。
そればかりが気がかりで、演奏どころではない。
怪しいものではございませんとばかりに無理に笑顔を作ろうとして、気を取られて間違えたりする。
まだまだアイドルとしての修行が足りないと反省させられる。


ライブ後には、Mさんが事前に買っておいてくれた焼き鳥でなごんだ。
その後、近所の居酒屋でさらになごんだが、風邪を治したい一心でねぎミソラーメンを注文し、近年まれに見る満腹感とともに帰路に着いた。
その帰り道、クルマを運転している目の前に突如警官が現れ、ヘンテコな棒に向かってハァーっと息を吹きかけろと言う。
相手は銃を持っているキケンがあるから言われるとおりにしたが、ヘンテコな棒は息を吹きかけてもウンともスンとも言わず、何事もないままにスルーした。
酒を飲んでいたか否かはここでは書くことができない。
だが、居酒屋で一緒になごんでいたC君が肝臓の働きを促進する薬物を持っていて、それをこっそりもらって飲んだことを告白しておこう。
ただし、この場でC君に感謝してしまうとあたかも酒を飲んでいたかのように思われるから、あえて礼は言わない。
警官が悔しそうな顔をしていたという事実を伝えるにとどめたい思う。