餞別/オノテツ

2時就寝、8時起床。
仕事場に年が一回り以上離れた後輩がいるのだが、彼はどういうわけか60〜70年代の音源の復刻版CDをたくさん持っていて、いろいろと見繕っては貸してくれる。
その中の一枚を気に入っていたら、餞別ということなのだろうか、気前よくくれてしまった。
若いくせに粋なことをする。


夜はニシオギで寄り合いがあり、久しぶりに戎で飲んだ。
ハンサム食堂なども候補に上がっていたが、欧州ツアーから戻ったばかりで時差ボケ中のR嬢が和食をご所望だったため、半ば強引に皆を北口の戎へと連行したのだ。
北口の戎といえば以前はほぼ毎週のように通っていたが、最近はとんとご無沙汰で、かれこれ1年くらい顔を出していなかった。
その間に店員さんもすっかり入れ替わったようで、店に入っても知った顔が見あたらない。
でも品書きの中身はほぼ同じで安心した。
日本酒の「戎」が一杯220円というのも変わらない。
9時を過ぎると目ぼしい料理が次々と品切れになるのも、相変わらずである。


行きつけていた頃は、まずはレバーとカシラ、砂肝などをかじりながらビールを飲み、その後にホヤ酢をつつきながら「戎」を冷やで飲むのが楽しみだった。
しかしホヤはすぐに売り切れるから、最初に注文してキープしておく。
皿を目の前にしながらも手をつけずにいると、何となく価値が高まるように感じられ、それとともに楽しみも増す。
子どもが好きな食べ物を最後までとっておくようなものである。


このように、自分にとってはいつでも高い価値を誇っているホヤだが、実は日本国内では需要が少なく、ダブつき気味らしい。
新聞によると、最近では韓国などに安値で売りさばかれているのだそうだ。
日本のホヤは身が大きいと、韓流の一般人たちにも人気とのことである。
そんなことなら、少なくともオレがよく行く飲み屋には品切れにならぬ程度に卸してほしいものだ。
あるいは、餞別としてオレにくれてもいい。