ベランダの黒いビニール袋/コジマ

小遣い稼ぎが出来ると言うので、密教系の新興宗教に加入した。


いろいろと内職を回してくれると言うのだが、それで押しつけられたのが何故かタイ人の子供の死体6体である。
これを本部からの指示通り防腐処理を行えば、一体につき2万円くれると言うのだ。
何に使うか訊いた様な気もするのだが忘れてしまった。


防腐処理の仕方だが、行程は2つに分かれている。
まず、死体の血液を、本部から届いた一升瓶の中身と入れ替える。
ちなみに、一升瓶の中身は活性水と言う水で、特殊な浄水器で作った水でいつまでたっても腐ることは無い、と本部の人間は言う。
その後、内臓と脳を取り出し、発泡スチロールの粉を詰めて縫い合わせれば完成である。
簡単だが、これで半永久的に死体は腐らないと言う。


締め切りは一週間後だが、死体が痛むといけないから早めにやるように言われた。
とりあえず、付属のモーターを使って死体の血液と活性水とやらを入れ替えたのだが、これが思いの外重労働で疲れてしまった。
見たいテレビもあったので、残りの作業は明日でもいいや、と思い、死体を黒いビニール袋につめてベランダに出した。
この季節だから腐ることもあるまい・・・・・


と思っていたら、近所の人間が通報したみたいで、警察が来た。
オマワリは土足で上がり込んできて(そう、奴らはいつも土足だ)、めざとくベランダのビニール袋を見つけやがった。
「これは何だ?開けてみろ!」
とりあえず開けてから説明するか、と思ってビニールを見ると、何故かぱんぱんに膨れ上がっている。
腐ってガスが発生したらしい。
畜生、本部の奴ら、活性水を注入すれば腐らねえって言ったじゃねえかよ。
どんだけ腐っているんだろう。
イヤだなあ。
開けたくねえなあ。





・・・・と思って困っていたところで、電話で起こされた。
仕事の締め切り前で寝たのは今朝7時半、電話がかかってきたのは9時15分、さらに電話の内容は糞マンションの糞セールスだったが、今日ばかりは糞セールス電話に感謝した。






今日はやたらとセールス電話がかかってくる日で、その後メールチェックしつつ歯を磨いていたらリフォーム会社から電話。
流しから遠いので口をゆすぐ暇も無く出たのだが、そのせいで大変しゃべりづらい。
すると、先方はこちらが何らかの障害がある人と勘違いしたらしく
「おうちの人はいないのかな〜?」
とか
「ごめんね〜。また電話するからね〜」
などと、やたらと優しく対応されてしまった。
何だか、すみません。